野菜で野球チームを作るなら?真面目に考えた真夏の日

野菜で野球チームをつくるとしたら、あなたが監督ならどの野菜を選びますか? 肉料理だったら? そんなことを真面目に考えた真夏のある日の出来事です。
相澤冬樹 2024.08.31
誰でも
下仁田ねぎではありませんが…

下仁田ねぎではありませんが…

あたりは一面のネギ畑だった。真夏の群馬県、下仁田町を走る車内にオッさん2人、オバちゃん2人。会話も途切れがちになったところで目に入ってきたのが、名物・下仁田ネギの見事な光景。

「ネギっていいよね。薬味に良し、焼いて良し、煮て良し。欠かせないよね」

すると助手席のオッさんXがガバッと後部座席の私を振り返り、唐突に

「相澤さん、野菜で野球チーム作るとしたらクリーンナップは何だと思います?

「何だよ突然。下仁田ネギの話をしたからネギが4番ってこと?」

「いやあ、ネギは確かに万能ですが4番を任せるには線が細いでしょう。切り込み隊長の1番じゃないですか」

「じゃあ4番は何だよ」

こうしてアホらしくも真面目に野菜チームのスタメンを考える羽目になったのである。

夢の野菜オールスターチーム 栄えあるスタメンは?

Xは厳かに宣言した。

「4番は鉄板でナスでしょう。焼いても煮ても揚げても生でもいい。酒のアテにもごはんのおかずにも最高です。マーボナスという手もある」

ダイコンはどうよ。いかにも4番という風格があるし」

「ダイコンはねえ、スタメンには欠かせませんが、クリーンナップを任せるにはちょっと。6番あたりに置いときましょう」

「じゃあタマネギは?これも欠かせないメンバーだろ」

「タマネギはネギとのコンビで2番ということで」

「何だよ、オーダー自分で先に決めてるやんか」

ここで後部座席のオバちゃんYが声を上げた。

ゴーヤは? 私、大好き。サラダでもゴーヤチャンプルでも」

ところがXはバッサリと、

「ゴーヤは代打の切り札です。スタメンには入りませんよ」

「それじゃトマトは?」と私。

「トマトはいいですねえ。3番を任せましょう。生でも料理でもいい味出しますよ」

「じゃあ5番にはぜひキャベツを押したい。生キャベツは焼き鳥屋のマストアイテムだし、ホイコーローでも活躍するし、何と言っても千切りキャベツはトンカツに欠かせないだろ」

「そうですね。キャベツは5番ということで、クリーンナップはトマト、ナス、キャベツの打線と決まりました」

「トマトとナスはナス科のコンビだね。同じナス科ということでシシトウはどう?」

「シシトウ? スタメンには入らないんじゃないですか」

「じゃあ万願寺は?」

「相澤さん、友達いないでしょう(笑)ここで万願寺出しますか? 普通出さないでしょ」

「じゃあピーマン。子どもの嫌われ者」

「ピーマンですか。う~ん、8番あたりですかね」

「個人的にはニラも外せないと」

「じゃあ7番がニラで、8番ピーマンと外野を守ってもらうと。相性は悪そうですが、何とかなるでしょう」

「するとあとは9番だな」

「9番と言えば投手です。パンチがある奴がほしいですね。ニンニクなんてどうです?」

「いいねえ。じゃあ抑えはショウガで」

「勝ち星稼ぎそうですね」

「でも大事な奴らをだいぶ落としてるよ。ニンジンとかゴボウとか」

ここでオバちゃんYが再び「ハクサイも、ホウレンソウも」。しかしXはどっしりと、

「彼らにはベンチ入りはしてもらいますが、控えで活躍の機会を待ってもらいましょう」

「あと、キューリを忘れてるぜ。こいつも酢の物にもサラダにも欠かせないだろ?」

ところがXはあっさりと、

「キューリには2軍で修業してもらいます」

「それ、自分の好みやろ(笑)」

こうして夢の野菜オールスターチーム『八百屋ベジタブルズ』のスタメンは以下のように決まった。

1番 ネギ【ショート】

2番 タマネギ【セカンド】

3番 トマト【キャッチャー】

4番 ナス【サード】

5番 キャベツ【ファースト】

6番 ダイコン【ライト】

7番 ニラ【レフト】

8番 ピーマン【センター】

9番 ニンニク【ピッチャー】

リリーフ…ショウガ

代打…ゴーヤ

控えに回った野菜が多すぎるが、そこは趣味の世界で仕方あるまい。Xがしみじみ語る。

「私、ナスにこだわってましたけど、こうやって打線を組んでみると3番キャッチャーのトマトが主軸のチームですね。ピッチャーのニンニクとの相性を考えてもキャッチャーはトマトしかいないかと」

野菜に続いて肉料理のドリームチームが

こうして無事野菜チームが決まったと思ったら、Xが再び水を向けてきた。

「野菜に対抗するのは肉ですね。肉チームのクリーンナップは何だと思います?」

「おいおい、肉って牛・豚・鶏にせいぜい羊・馬ってところでしょ。チームが組めないやん」

「だからそこは肉料理ということで」

「じゃあステーキ

「“いきなりステーキ”(笑)それはハードル高いです。肉料理の評価は味だけじゃなくて、安価で人々に広く愛されているかがポイントなんです。そういう意味で私は、4番はから揚げ(鶏カラ)だと確信しています。4番だけじゃない。投手もです。から揚げは肉料理界の大谷翔平なんです!」

肉料理界の“大谷翔平”

肉料理界の“大谷翔平”

「そこまで力まなくても、わかったよ。じゃあから揚げがエースで4番として、3番と5番は?」

「もちろん3番はハンバーグ

「5番はトンカツで、キャッチャーとしてから揚げとバッテリーを組んでもらいます」

「それって全部お子ちゃまメニューやん。しかも高カロリーの。Xさん、だからその体形じゃないの? 前に会った時よりだいぶ大きくなってるし」

「それは“デブハラ”ですよ。相澤さんは組織を辞めたから知らないかもしれませんが、今、世の中はハラスメントに厳しいんです」

こう見えてXは職員約1万人の大組織で「上位100人くらい(本人談)」に位置するらしい。そんなお偉いさんがこんなアホなことばかり考えていて大丈夫か?  もちろん大丈夫。アホなことこそいい仕事を生み出す秘訣だ。しかしパワハラセクハラなら知っているがデブハラなんて初めて聞いたぞ。まあネタだよね。本当に世の中にデブハラが横行しているならXがこんなに出世するわけがない。

お子ちゃま高カロリーメニューのクリーンナップが決まったところで、運転手のオバちゃんZが声を上げた。ハマショーこと浜田省吾の押し活歴うん十年で、ここまでハマショーのことしかしゃべっていなかったが、ついに肉料理チームの話題に参加した。

「私、しょうが焼きが好きだなあ」

「わかりました。7番でどうでしょう?」

即座に採用だ。車を出して運転してもらっているから当然か。

焼き鳥は外せんやろ。居酒屋の切り込み隊長や」と私。

「じゃあ1番ですね」

「ステーキはどうなるねん?」

「6番を打ってもらいます」

「2番が空いてるな」

「そこはギョーザが」

「おいおい、ギョーザって肉料理か?

「ギョーザは肉料理です、私の中では」

力強く宣言するX。ここで私は焼き肉が打線に入っていないことに気がついた。

「8番に塩タンってどう? 9番カルビで、焼き肉コンビ」

「相澤さん、やっぱり友達いないでしょう(笑)。ここで塩タンとか出します? 8番はチキン南蛮です」

発祥の地、宮崎のチキン南蛮

発祥の地、宮崎のチキン南蛮

「ええ~? から揚げとキャラがかぶるやんか」

「いいんです。あくまで別メニューです。最後は9番ジンギスカンで決まりです」

夢の肉料理オールスターチーム『スタミナミーツ』のオーダーは以下のようになった。

1番 焼き鳥(ねぎま)【ショート】

2番 ギョーザ【センター】

3番 ハンバーグ【サード】

4番 から揚げ【ピッチャー】

5番 トンカツ【キャッチャー】

6番 ステーキ【ファースト】

7番 しょうが焼【セカンド】

8番 チキン南蛮【レフト】

9番 ジンギスカン【ライト】

野菜以上に控え選手が多そうだ。牛丼とか、すき焼きとか。チキン南蛮が入っているのに骨付きチキンがないと、高松市民からクレームが出そうではある。宮崎出身の私としては、地鶏炭火焼きのスタメン入りを押したいところだ。子ども時代、父親が呑み屋の帰りにお土産で買ってくる骨付きもも焼きがご馳走だったのだ。ではあるが、チキン南蛮も宮崎発祥だからここはおとなしく引き下がるとしよう。

肉料理チームについてXの感想は、「焼き鳥としょうが焼きの二遊間の守備が堅そうですね」。

この後さらに夢の魚チームの編成に取りかかり、「サンマ、サバ、アジのクリーンナップ」が提案された。マグロやカツオが入っていないところがニクい。

しかしここで車が高崎駅に到着し、一同解散となった。沈みがちな気持ちを少し和らげてくれた話題だった。

御巣鷹の尾根 2024年8月12日

御巣鷹の尾根 2024年8月12日

2024年8月12日、日航ジャンボ機墜落事故から39年。私たち一行は墜落現場の御巣鷹の尾根へ慰霊登山に参加した。

現場に登る山道

現場に登る山道

慰霊碑から見える向かいの尾根には、ジャンボ機がぶつかった際にえぐれたV字型の跡が残る。その跡が時の流れとともに小さくなってきたことに一抹の寂しさを訴える方もいた。

ジャンボ機がぶつかった跡のV字型

ジャンボ機がぶつかった跡のV字型

ご遺族とともに追悼式に参列して山を下り、仲間同士で車に乗り合わせての帰り道だった。

慰霊の集い

慰霊の集い

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