"マンガ通" 麻生財務大臣が超人気漫画家を間違えた!

マンガ通で知られる麻生太郎財務大臣が会見で超人気漫画の作者を間違えた。
相澤冬樹 2021.08.03
誰でも

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さて、今回の話題に移ります。

***

「鳥山さんが、鳥山というのは“こち亀”描いている葛飾区に住んでいるおじさんだけど…」

麻生太郎財務大臣が会見でそう語りだした。「こちら葛飾区亀有公園前派出所」はコミックスが全200巻。ゴルゴ13に抜かれるまで世界一だった超人気漫画だ。

その“こち亀”が新たに201巻を出しゴルゴ13に並ぶことについて、“マンガ通”で知られる麻生大臣に閣議後の会見で質問した。すると麻生さん、「ほほぅ」とにんまり笑顔を浮かべた直後に、まさかの「鳥山」発言。ドラゴンボール、Dr.スランプの大ヒットを生み出した鳥山明さんが、“こち亀”の作者でもあるという珍説を披露した。

と書くと、ちょっと意地悪すぎるかもしれない。単に“こち亀”の作者の秋本治さんと、同じ週刊少年ジャンプに連載していた鳥山明さんを取り違えただけだ。だけ、なんだけど、マンガ通がよりによってそこ間違える?!と心の中で突っ込んでたら、大臣の横からさっと財務省の職員が飛んできて耳打ちした。会見で失言した時よく見る光景だ。でも耳打ちの内容が「秋山さんです」…お~い、あなたも間違えてるよ。麻生大臣もそのまま「秋山さんでした、ごめんなさい」と語ったもんだから、職員があわてて再び飛んできて耳元で「秋本さんです」。…もはや漫才や。

そもそも財務大臣会見でマンガの話題を振ったのは伏線だった。大好きなマンガの話で口が滑らかになったところで、本題の財務省改ざん問題を切り出そうと考えていた。そしたらその前振りの部分でいきなり超人気漫画家の名を取り違える“大失言”が炸裂。こちらがネタになってしまった。

麻生太郎さんと言えば失言王。選挙で有権者に「下々の皆さん」。憲法改正巡り「ナチスの手口に学んだらどうか」。財務次官セクハラ問題で「セクハラ罪という罪はない」。踏襲(ふしゅう)、未曾有(みぞうゆう)など漢字の読み違いも多いけど、まさか得意のマンガでしくじるとは、「弘法も筆の誤り」か? 「弘法筆を選ばず」とも言うが…

だが“失言”はこれにとどまらない。“こち亀”の次は「風の大地」だ。麻生大臣は漫画誌のインタビューで、先が気になるマンガとして、小学館の漫画誌ビッグコミックオリジナルに連載中のこの作品をあげていた。そこで更なる伏線として、このマンガを今でも読んでいるか尋ねると、

「風の大地というのは、例の宇都宮の話だね」

風の大地は当初、鹿沼カントリー倶楽部という実在のゴルフ場が舞台になっていた。その名の通り栃木県鹿沼市にある。宇都宮は栃木県の県庁所在地だから、これまた取り違えたのだろう。それを指摘するのも大人げないので黙っていると、麻生大臣はこう畳みかけてきた。

「宇都宮の話だねって言って逆質問されて答えられない程度の知識なんだということはわかったけども」

間違えているのは麻生大臣の方だが、自分が正しく相手(質問者である私)がわかっていないという前提で、上から目線で話してくる。以前の会見で、公文書改ざんの実態を記した「赤木ファイル」について質問した記者に、自分の方が勘違いしているのに記者の方がわかっていないという前提で決めつける場面もあった。

だが、質問自体には丁寧に答えてきた。

「今でも読んでますかって? はい、読んでますよ。今セント・アンドリュースね。今、最後の嵐の中で、えらい騒ぎでゴルフしてますよ、はい」

最新のストーリーをきちんと把握している。マンガ好きであることは間違いないようだ。そこで私は重ねて尋ねた。

「風の大地は最後にですね、ポエムがあるのが特徴で、もちろんご存じだと思いますけれども、このポエムも大臣は読んでいらっしゃるんですか?」

「あんまり読まない。マンガのとこだけしか読まない」

「なるほど、じゃあこのビッグコミックオリジナルにはですね、毎号コラム欄があるんですよ」

「読んだことない」

マンガだけを読んで、文章は読まない。普通はあまり認めたくないことだろうが、それを率直に語るあたりも麻生節なのだろう。ここから話は本題に近づいていく。

「(ビッグコミックオリジナルの)5月5日号にですね、『太郎さんへの手紙』というコラムが掲載されておりまして、この太郎さんというのは麻生太郎さん、つまり麻生財務大臣のことなんです」

実はこのコラム、私が書いたものだ。そこでは、麻生大臣が福岡の筑豊地区の出身であること。この地は炭鉱が多く、遠賀川沿いにあって、人々は川筋ものと自称し、気は短いけど心は熱い、人情に厚いということを紹介している。その内容を紹介したうえで、こう尋ねた。

「麻生さんが経営する会社の社員が仕事で亡くなったら、必ず冥福を祈るのではないですか?」

麻生大臣の実家はもともと炭鉱を経営していた。

「うちは炭鉱やってましたんで、炭鉱の中で事故に伴う死亡者が出るという時代が長くありましたんでね。私のうちの中には、そういった方をお祀りする祠っていうか、神社が建てたりいろいろしてますけれども」

自社の犠牲者はきちんと弔っている。それではいよいよ本題だ。

「そのような心をお持ちの麻生財務大臣が、今、財務省のトップをお務めになっているわけで、財務省近畿財務局の職員が、まさにその仕事に関連してお亡くなりになっているわけですけれども、このお墓参りに行くという考えはないんでしょうか?」

森友学園との国有地取引をめぐる財務省の公文書改ざん。政権を揺るがす大スキャンダルが明らかになった際、現場で反対したのに改ざんをさせられた近畿財務局の職員、赤木俊夫さん(享年54)が命を絶った。その墓前で麻生大臣が追悼の意を表すことを、妻の赤木雅子さん(50)は望んでいる。墓参に行かないのか? これが私の本題だった。

すると麻生大臣、苦笑しながら語りだした。

「最初からそこに質問すればよかったのにね。時間とられることがなかった」

皮肉を交えながらも、質問には答えた。

「哀悼の意を持つというのはこれ当然のことであって、最初のうち、お墓参りの話を私としては申し上げたと思いますね。その時はお断りになられましたから。しかし、ご本人(妻の雅子さん)はお断りになっていないと。私ども何人も行かせてお断りになったという話ですから。言った言わないという話になっちゃいますんで」

ここで麻生大臣は実は重要な新事実を明かしている。まず、自分自身が当初、墓参を希望し、職員を通して妻の赤木雅子さんに打診したこと。何人も職員を行かせたが、いすれも妻が断っていると報告を受けたこと。

だが「何人も行かせた」と言うけれども、大臣の墓参について赤木雅子さんに意向を尋ねてきたのは、ただ一人。当時、近畿財務局舞鶴出張所にいた深瀬康高さんだけだ。亡くなった俊夫さんの同期で一番の仲良しだった。

打診は電話だった。赤木雅子さんははっきり「来てほしいです」と答えたという。ところが翌日、深瀬さんは「大臣が来ると大変なことになるからお断りすると、そういうことにしますから、いいですね」と、電話で一方的に告げたという。他に財務省の人からこの件で打診を受けたことはないし、自分から墓参を断ったことは一度もないと、赤木雅子さんは明言している。

何人も行かせたというのは事実に反している。赤木さんの自宅を訪問した財務省の職員は何人かいるが、墓参の打診は一人だけだし、その一人も実際に来てはいない。マンガの話と同じく麻生大臣の勘違いだろうか? いや、そうではないかもしれない。財務省の職員が大臣にウソの報告をした可能性もある。

だから真実は、赤木雅子さん、深瀬康高さん、どちらかがウソをついていることになる。麻生大臣は「言った言わない」と語ったが、ご遺族がウソをついていると言うつもりだろうか? 白黒つけるには、まず自分のところの職員である深瀬さんに話を聞いたらいい。深瀬さんはその後出世して今は水戸財務事務所の所長を務めている。東京のわりと近くだ。すぐに本省に呼んで麻生大臣が直接問いただしたらいい。「赤木の奥さんは、本当に墓参を断ったのか?」と。

だがこの会見でそこまで細かく追及する時間はない。麻生大臣は、今は裁判をしていることを理由に、決着が着くまで墓参する考えはないことを強調した。私はそこに突っ込んだ。

「裁判を起こしているのは妻の赤木雅子さんです。お墓は赤木俊夫さんのもので、俊夫さんは裁判を起こしていないし、お墓も裁判を起こしません。裁判の当事者ではない俊夫さんの墓参りをすることが、なぜ裁判に影響があるんでしょうか?」

「我々としては原告と被告という立場になれば、死んだ方であろうと死んだ方の身内であろうと、裁判の中においては、一体と考えて対応するのが当然だと思ってますけどね」

「でも墓参りをするだけだったら何の関係もないんじゃないですか?」

「それはあなたの見解」

そこで私は、麻生大臣も愛読しているというビッグコミックオリジナルの5月5日号を掲げて大臣に示した。例の「太郎さんへの手紙」というコラムが載っている号だ。その表紙に、こういう一文がある。

「こんな大人になるなよと子どもの日」。

大人気マンガ「釣りバカ日誌」の作者、北見けんいちさんの言葉だ。この言葉を、謹んで麻生太郎財務大臣に贈った。ところが麻生大臣は皮肉が通じたのかどうか、会見を終えての帰り際につぶやいた。

「珍しいのがいっぱい来てたね、きょうは。ふっふ。東京新聞の友達か? はっは」

終始ご機嫌な様子だった。やはり最初にマンガの話題を出したのがお気に召したのだろう。

 この日、7月20日の記者会見の映像を、東京新聞がノーカットで自社サイトにあげています。“お笑い”耳うちは開始から5分48秒から6分ごろにかけて2回見られます。「マンガのとこだけしか読んでない」発言は7分15秒ごろ。お墓参りをしたいと申し出たが断られたというくだりは9分30秒ごろからです。

ユーチューブの東京新聞チャンネルにも同じ映像があります。

***

きょう8月3日は…

僕は新幹線で東京に向かっている。きょうも麻生財務大臣の閣議後会見に出るためだ。新聞社を辞め独立して初めての会見参加。質問は頭の中で練り上げているところだ。

前回の会見で、麻生大臣は意外に率直にものを言うという印象を受けた。勘違いは多いが、少なくとも前回会見で意図的なはぐらかしはなかったように感じる。そして思った。麻生大臣は財務官僚から人気があると聞いている。彼らの振り付け通りに動いてくれるから。麻生大臣は財務省に騙されている部分があるのではないか? 赤木俊夫さんの墓参をめぐる話に特にそれを感じる。

きのうに続きエアロスミスを聴いている。きょうの曲はAngel.「あなたは僕のエンジェル。今夜救いに来てよ」と繰り返す、直球ど真ん中のラヴソング。キムタク主演のテレビドラマのオープニング曲になったから日本でも知っている人が多いだろう。

この曲に次のような歌詞がある。

「あなたは僕が生きる理由になる。死ぬ理由になる。与える理由になる」

あなたって誰だろう? 麻生さんではないな。

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