『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』掲載誌スピリッツ“水着”表紙の行方

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』掲載の『週刊ビッグコミックスピリッツ』について「作品はいいけど表紙がちょっと…」という声がある。水着姿の女性がドーンと載っていると男性も「家で家族に変な目で見られる」と評判が芳しくない。今号は肌の露出なしだが、果たして売れ行きは?
相澤冬樹 2022.02.21
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マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第4話より

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第4話より

限りなく事実に近いフィクション

小学館のマンガ誌『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載中の『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』。財務省の公文書改ざん事件で夫の赤木俊夫さんを亡くした雅子さんを主人公にした物語です。第4話の掲載号がきょう21日発売されました。

「この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません」とお断りするのは創作の自由を確保するためのお約束ですが、そこから続けて「実在する人々の切なる想い、祈りには大きく関係しています」と表明しています。当事者である赤木雅子さんに話を聴いた「限りなく事実に近いフィクション」なのです。

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第4話より

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第4話より

掲載中の第4話は、マサコさんが記者会見で「これを見てください」とコードを掲げ、「夫はこのコードを首に巻いて自殺したんです」と語る衝撃的なシーンから始まります。これは実際に去年6月24日、赤木雅子さんが外国特派員協会の会見で行った出来事です。会場にマンガ制作チームも来ていて、その様子を見ていたから再現できました。

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第4話より

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第4話より

改ざんを告発する「手記」を遺し命を絶ったトシオさん

続いて場面は、赤木俊夫さんが命を絶った4年前の3月7日に移ります。刑事たちが自宅にやってきてトシオさんの遺書を見つけます。そこに書かれた「これが財務官僚王国。最後は下部がしっぽを切られる」という悲痛な手書きの文字。パソコンにはA4で7枚に渡る、改ざんを告発する「手記」もありました。この遺書や手記は、現実に俊夫さんが遺したものを文字の形に至るまで忠実に再現しています。マサコさんは、夫が何に一人で苦しんでいたのかをようやく知ります。

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第4話より

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第4話より

「週刊文春にでも持って行こうかな…」を刑事が止める

刑事たちが立ち去る時、その一人が「ご主人の手記どうするつもりですか?」と尋ねます。するとマサコさんは……

『週刊文春』にでも持って行こうかな…

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第4話より

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第4話より

もちろん雅子さんはこの時点で『週刊文春』とつながりがあったわけではありません。ただ、この時すでに「文春砲」の名が轟くほどスクープで名高かったため、思い付きで口にしただけです。ところが刑事は「奥さん悪いことは言いません。マスコミに渡すのはやめたほうがいい」「余計なことは考えないほうがいい」と告げます。

ここで描かれている会話も、事実そのままです。現実に4年前、赤木雅子さんと刑事の間でこのような言葉が交わされたのです。雅子さんはその後実際に俊夫さんの手記を『週刊文春』で公表しますが、それまでに2年の歳月を要しました。

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第4話より

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第4話より

二人の編集者を合わせて一人に“創作”

このように、どこまでも骨格となる事実に忠実に描かれていますが、細かい部分ではもちろん「フィクション」もあります。例えば第4話の冒頭、マンガチームが外国特派員協会の会見に向かう場面で、マンガ家の魚戸おさむさん、原作者の宮崎克さんと並んで、担当編集者の「山上マキ」さんが登場します。実際には担当編集者は二人いて、そのうち一人がマンガに描かれたような若手の女性です。編集者は二人とも会見に来たのですが、物語の都合で二人を合わせて一人に描き、名前も二人の名前の一部を合成しています。このように事件の根幹に関わらない部分ではいろいろと創作された場面もあります。

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第4話より

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第4話より

表紙の“水着女性”問題の行方は…

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』はこれで連載4回目。毎回掲載誌をお買い上げいただいている方から、「作品はいいけど、この表紙がちょっと……」という声が届いています。第1話の掲載誌の表紙がこちら。

週刊ビッグコミックスピリッツ第8号の表紙は水着女性

週刊ビッグコミックスピリッツ第8号の表紙は水着女性

水着姿の女性がドーンと載っています。2回目、3回目も同様でした。女性は手に取りにくいでしょうし、男性からも「家に持ち帰ると家族に変な目で見られる」と評判が芳しくありません。担当編集者もこうした声を編集部に伝えているそうです。ですが……

「水着の女性が表紙に載るのと載らないのとで、てきめんに雑誌の売れ行きが違うんですよね。載らないと売り上げがドーンと落ちちゃうんで、難しいんです」

マンガ誌も商売ですから売れ行きは大切です。それは仕方ありません。ですが今号の表紙をご覧ください。

週刊ビッグコミックスピリッツ第12号の表紙は水着ではない

週刊ビッグコミックスピリッツ第12号の表紙は水着ではない

女性が大写しになっていますが水着ではなく、セーターを着ているので肌の露出もありません。この女性は表情のアップで充分読者をひきつける力があるとみなされているのでしょう。これで今号の売れ行きが前号より落ちなければ、水着女性の登場も少なくなる…かもしれません。行方を注目したいと思います。

次回は俊夫さんの命日3月7日に発売

このマンガは第3話まで毎週掲載されてきましたが、慎重を期して制作を進めているため、なかなか手間がかかります。そこでちょっと連載の間隔をあけて、第4話から第6話までは隔週掲載になります。次回、第5話は翌々週の月曜日、3月7日発売号に掲載される予定です。くしくもこの日は赤木俊夫さんの4回目の命日にあたります。命日に発売される第5話では、俊夫さんが亡くなった直後から始まる、財務省近畿財務局の上司の背信と、同期の裏切りが描かれます。

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第5話より

マンガ『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』第5話より

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2月8日に続き『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』について紹介しました。これからも随時取り上げて連載を盛り上げたいと思います。

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