安倍さん昭恵さん夫妻が赤木ファイルでしたこと
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赤木ファイルと安倍氏のツイート
「茜ちゃんの接客、最高でした~!」
安倍晋三前首相の妻、昭恵さんがご機嫌でインスタグラムに投稿した。茜ちゃんとは、カフェで給仕するロボットのこと。重い障害で外出が難しい人が遠隔操作でロボットを動かすカフェだ。障害ある人の社会参加を促す取り組みで、投稿には好意的なコメントが寄せられる一方、辛辣なコメントも目立った。
「呑気にカフェで楽しんでいる場合でしょうか?」
「あなたには罪の意識はないのですか?」
「すべて話すべきでは?」
なぜこの投稿が“炎上”するのかと言うと、ずばり、時期があまりにビミョーだったから。昭恵さんにとって約4か月ぶりだった投稿の日付は6月26日。その4日前、6月22日に、世間の注目を集めた「赤木ファイル」が開示されている。絶妙なタイミングでの投稿だったのだ。
赤木ファイルは、森友学園との国有地取引をめぐる財務省の公文書改ざん事件を告発する文書。現場で改ざんに反対しながら押し付けられた赤木俊夫さん(享年54)が実態を詳細に記録した。学園の小学校の名誉校長を務めていた安倍昭恵さんの名前を公文書から削るよう、財務本省が出先の近畿財務局にメールで指示していたことが一目瞭然となった。
赤木俊夫さんは改ざんさせられたことを苦に命を絶った。その妻、赤木雅子さん(50)が去年3月、国などを相手に裁判を起こした後、「夫が残したファイルがあるはず」と開示を求めたが、国は「あるともないとも言わない」と実に不誠実な態度を取ってきた。それが裁判所に促されてようやく開示されたばかりだっただけに、昭恵さんの投稿には突っ込みが相次いだ。
赤木ファイルの入った封筒を開ける赤木雅子さん - 相澤冬樹のリアル徒然草
赤木ファイルを確認する赤木雅子さん - 相澤冬樹のリアル徒然草
「赤木ファイルが開示されましたけど、どうお考えでしょうか?」
「赤木さんの奥さんに言うことないの?」
「赤木ファイルが真実を語っている、もう逃げられない」
中には「いい土地なので前へ進めてください」というコメントもある。これは昭恵さんが森友学園の理事長だった籠池泰典さんと詢子さん夫妻に、問題の国有地の前で語った言葉だ。
昭恵さんの投稿は確かに時をわきまえていない。謝罪と説明が先だという批判もよくわかる。だが、投稿内容自体には罪はない。その点、夫の安倍晋三前首相の公式ツイッターに6月24日に出された、この言葉は見逃すわけにはいかない。
【赤木氏は明確に記している。「現場として(森友学園を)厚遇した事実はない」この証言が所謂「報道しない自由」によって握り潰されています。《秘書アップ》】
このツイートを目にして、妻の赤木雅子さんは、そっと声を絞り出した。
「夫は、これで3回殺されたんですね…」
なぜ、このように表現したのだろうか? それを読み解く前に、まず安倍前首相の公式ツイートを分析する必要がある。
第三の殺人
赤木ファイルの冒頭で、赤木俊夫さんは確かに以下のように記している。
「本省(財務省)の問題意識は、調書から相手方(森友)に厚遇したと受け取られるおそれのある部分は削除するとの考え。現場として厚遇した事実もないし、(会計)検査院等にも原調書のままで説明するのが適切と繰り返し意見(相当程度の意思表示し修正に抵抗)した。」
俊夫さんが改ざんに抵抗した跡を示す手書きメモ - 相澤冬樹のリアル徒然草
この「現場として厚遇した事実もない」という部分をとらえ、安倍前首相の公式ツイートは、森友学園との国有地の取引は「厚遇ではない=問題ない」と解釈。マスコミに「報道しない自由で握り潰されている」と揶揄した。一見もっともらしく思えるだろう。
だが、赤木俊夫さんは公文書改ざんの当事者ではあるが、国有地取引の当事者ではない。問題の国有地が森友学園に8億円も値引きして売却されたのは2016年6月。地中のごみが理由とされたが誰もその存在を確認していない。一方、俊夫さんが担当部署に異動してきたのは翌7月だ。つまり俊夫さんは交渉に関わっておらず、取引の経緯を直接知らないのである。
ではなぜ「厚遇していない」と書いたのか?
それは売買交渉に携わった上司の池田靖 統括国有財産管理官(当時)が、そのように俊夫さんに伝えていたからだろう。雅子さんが語る。
「夫は池田さんのことを信頼していました。年下の上司でしたけど尊敬できると。森友問題が発覚した当初『取引は正当だと池田さんに聞いている』と話していました。だからあのように書いたんでしょう」
改ざん直後、赤木ファイルを作ったころは、そう信じていたようだ。しかし時がたつにつれ俊夫さんは池田さんへの不信感を募らせていく。決定的だったのはその年の人事異動。改ざんを気に病んだ俊夫さんは別の部署への異動を希望していた。池田さんは「大丈夫だよ」と請け合っていたが、実際には俊夫さんだけが残され、池田さんをはじめ他の職員はみな異動していなくなった。しかも異動後、問題の国有地取引に関する資料が職場から消えていたという。「それがとにかくショックやった」と俊夫さんは打ち明けた。
「むっちゃ落ち込んでました。一人だけポツンと残されて、資料はすべて処分されて…夫に取引の真相を知られたくなかったんですよね。あんまりです」
この直後、俊夫さんはうつ病と診断され休職。そのまま職場に戻ることはなかった。その後、信頼していた池田さんへの不満を漏らした。
「池田さんは仕事が雑や。ちゃんと(国有地を)売っていたらこんなことにならんかった。大学に売っとったらよかったんや」
大学とは、国有地の隣にある大阪音楽大学のこと。森友学園より先にこの土地の購入を希望し、7億円以上の額を提示したとされるが、近畿財務局は売らなかった。それを森友学園には1億3400万円で売った。これが厚遇でなくて何だろう。俊夫さんも問題のある取引だとさとっただろう。だが休職中だったので、ファイルを書き換えることはできなかった。
そもそも8億円の値引きに根拠が足りないことは、売買の当事者である池田さん自身が、俊夫さんの死後、雅子さんに認めている。
「この8億の算出に問題があるわけなんです。確実に(地中のごみを)撤去する費用が8億になるという確信というか、確証が取れてないんです」
他にも池田さんは、売買に先立つ森友学園側との交渉で「(籠池)理事長がおっしゃるゼロ円に近い金額まで、私はできるだけ努力する作業を今やっています」と発言している。まさに厚遇そのものだ。これらの発言はすべて録音データで確認できるし、いろんなメディアで報道もされている。
だから「厚遇した事実もない」と赤木ファイルに書かれていても、それは赤木俊夫さんの実体験ではなく、土地を売った池田さんの言い訳にすぎない。当時の首相ならわかっていて当然だが、公式ツイッターはこれ幸いと「厚遇した事実はない」と強弁する。
改ざんは、森友学園への国有地値引き売却が発覚した後、安倍前首相が国会で「私や妻が(取引に)関係していたら総理大臣も国会議員もやめる」と見得を切ったのが発端だ。それは財務省も認めている。これによって改ざんが行われ、赤木俊夫さんが死に追い込まれたのが「第一の殺人」だ。それなのに知らんぷりで安倍首相(当時)と麻生太郎財務大臣が再調査を拒否したのが「第二の殺人」。そして「第三の殺人」と言える今回安倍前首相の公式ツイート。すべては俊夫さんの告発を「なかったこと」にするものだと雅子さんは憤る。
「夫が死に物狂いで残した赤木ファイルを汚されたような気持ちがします。安倍さんは自分の発言が改ざんを招いた責任を感じてほしいです」
ツイートには「秘書アップ」とあり、「秘書がやったこと」と言い逃れることができるようにも読める。しかしこれは安倍前首相本人の公式ツイッターであり、責任は免れない。225万人もの人がフォローしているのである。
安倍前首相と昭恵さん夫妻は、いずれも赤木ファイル開示直後の投稿で多くの人のひんしゅくを買った。だが、その罪の重さは比較にならない。安倍前首相の公式ツイートは、虚偽を掲げて赤木さん夫妻の名誉を傷つける犯罪的内容だと私は見た。
真相をもとめて
赤木ファイルでわかったことは何だろう? 財務本省は改ざんの最初から、安倍昭恵さんや安倍前首相の名前を削るよう指示していた。財務省が何を気にしたかがわかる。佐川宣寿理財局長(当時)の指示で国会答弁に合わせ書き換えた。
もとの公文書にあった安倍昭恵さんの名前 - 相澤冬樹のリアル徒然草
まだわからないこともある。こんな大それた行為を誰が発案したのか?
改ざんを指示した佐川氏に、さらに指示した人物はいないのか?
省内で改ざんはどのように指示伝達されたのか?
わからないから再調査が必要だが、麻生財務大臣はまたも拒否している。
麻生大臣や安倍首相の名前も削られた - 相澤冬樹のリアル徒然草
でも雅子さんには亡き俊夫さんがついている。6月27日、最近痛み出した歯の治療を受けた時のこと。
「今日は歯医者でガリガリされてた時に、夫がそっと近くに来てくれてるような感覚がありました。もう悩まず治療して良くなろうと思ったら、腫れがひいて楽になりました」
夫が安倍さんに3回殺されようとも、雅子さんは真相解明の再調査を求め続ける。
「何回殺されてもわたしは何回でも助けに行きますから。諦めません」
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相澤冬樹
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