この賞は本来、赤木さんご夫妻のもの

おととし週刊文春に出した記事『森友自殺 財務省職員 遺書全文公開「すべて佐川局長の指示です」』が「調査報道大賞」の優秀賞に選ばれました。授賞式でのあいさつをご紹介します。
相澤冬樹 2022.09.10
誰でも

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2年前の週刊文春の記事が調査報道大賞の優秀賞に

調査報道大賞は、NPO法人「報道実務家フォーラム」と、スマートニュースの子会社で調査報道の新しい仕組み作りをめざす「スローニュース株式会社」が共同で実施しています。その目的についてウェブサイトでは「社会問題をジャーナリストの調べで明らかにする調査報道。そのすぐれた成果をたたえ、広く知らせることを通じ、市民が民主主義を担うため欠かせないジャーナリズムを強くする。」と掲げています。

「直近の報道に限らず、長期的に評価されるべき報道も対象とする」ということから、2年前に出した週刊文春の記事も受賞作の一つに選ばれました。授賞理由について表彰状には次のように記されています。

「森友学園に関する財務省文書改ざんを苦に自殺した近畿財務局の赤木俊夫さんの妻を取材する中で堅い信頼関係を築き、赤木さんが残した資料に基づき文書改ざんに関連する詳細な情報を明らかにしました。圧倒的弱者が国に向かっていく勇気と強さを感じさせる報道でした」

その授賞式が9月2日、東京のスローニュース本社で開かれました。赤木雅子さんと週刊文春の担当者も招かれました。そこでの私のあいさつを、一部加筆も含め記憶にある範囲で以下に再現します。

選考委員の長野智子さんから表彰状を受け取る(スローニュース提供)

選考委員の長野智子さんから表彰状を受け取る(スローニュース提供)

人生の賭けに勝ったと思うおごり

2020年3月18日、週刊文春にこの記事を出したことは私の人生の大きな転機になりました。私はその2年前にNHKを辞めておりますが、その時は「人生の賭けに出るんだ」という気構えでした。この記事を出したことで、私は「賭けに勝った」と思いました。そして、舞い上がりました。増長して、傲慢になったと思います。

今、私に一番必要な言葉は「謙虚」だと思います。でも困りました。私は根っから図々しく、この「謙虚」ということが一番苦手なんです。どうしましょう?

人生山あり谷あり

その後、赤木雅子さんの裁判はご存知の通り、国が「認諾」という卑怯な方法で裁判から逃げ出し、佐川氏(佐川宣寿元財務省理財局長)相手の裁判もこの11月に一審判決を迎えようとしています。そして私は来月60歳になります。また、人生の節目を迎えようとしていると感じます。

調査報道大賞の授賞式であいさつする私(スローニュース提供)

調査報道大賞の授賞式であいさつする私(スローニュース提供)

人生は落ち込めば上がり、上がればまた落ちます。今度は落ちる番が待っているのかもしれません。しかし元々私は森友事件が始まる半年前まで、ずっと人生の底に沈んでいたのです。10年間うつ病でした。あるきっかけで産業医が「奇跡の回復です」と驚くほどのよみがえりをしました。そのことを当時、「NHKスペシャルにしたい」と医療担当デスクに話したら「それはいいですね」となりました。NHKを辞めた今ではそれはかなわなくなりましたが、この経験を文章にしていずれ何らかの形で世にお示ししたいと思っております

締めているネクタイは30年以上前の新人記者時代に買ったもの(スローニュース提供)

締めているネクタイは30年以上前の新人記者時代に買ったもの(スローニュース提供)

今日(9月2日)、TBSの金平茂紀さんが「報道特集」のキャスターを降板するという発表がありました。金平さんには、この記事を出してから2年半、大変いろいろな形で励ましをいただき、助言もいただきました。本当に感謝しておりますし、金平さんのことですから、必ずまたよみがえって見事なお仕事を続けられるに違いないと信じております。私もそのようにしたいと思っています。

この賞は本来、赤木さんご夫妻のもの

そして、受賞したこの賞ですけど、対象になった記事は赤木雅子さんと俊夫さんご夫妻の人生の物語であり、俊夫さんが残した手記全文の掲載からなっております。ですから、この表彰は本来、赤木さんご夫妻のものだと思います。

赤木雅子さんが、あの時、私に手記を託してくださらなかったら、この記事は出なかったし、この賞は頂けなかったということを深く感謝しております。

(会場にいる赤木さんの方に頭を下げて)本当にありがとうございました。

テレビで育った者の気構え

(手元のスマホのストップウォッチを見て…) あいさつを始めてから、今2分49秒。(あいさつを指定の)3分以内に収めました。最後はテレビで育った人間の気構えを見せて終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

※ことしの調査報道大賞の受賞作は以下のサイトで紹介されています。

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前回のニュースレター配信(8月10日)からちょうど1か月。長い長い夏休みを頂きました。この間、まったくのご無沙汰で失礼いたしました。8月は有料記事を2本しか配信できませんでしたので、その分、9月で4本以上の有料記事を配信しようと考えております。これまでご説明もないままで申し訳ございません。

今月の目玉記事は、安倍元首相の銃撃・死去をめぐるお話です。事件から2か月。知られざるエピソードを写真付きでご紹介します。今後1週間のうちに配信するつもりです。

ほかにもいくつか記事を検討中です。目玉記事より先に出そうと考えているものもあります。まずはあす11日、授賞式でプレゼンターを務めてくださった選考委員でキャスター・ジャーナリストの長野智子さんの講評をご紹介します。

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